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2025.09.25

【SIAカナダ研修レポート】心の仮面を外して――公聴会に挑んだ子どもたちの声

公聴会へ繋ぐ一歩──自分自身と向き合う心のワーク「心の仮面を外す」勇気と絆の育む場

公聴会を翌日に控えたカナダ研修4日目は、アドボカシー実践のためのワークショップが行われました。この特別な一日では、大人と子どもがそれぞれの立場で、自分自身と深く向き合う時間を持ちました。

子どもたちはファシリテーターの導きのもと、絵具を使ったペイントを通じて自身の内面を表現。体験型ワークは二つのステップに分けられ、まずはキャンバスに「自分の軸となるもの」を描きました。その後、「仮面」をペイントしながら、自分の外側(人から見られる自分)と内側(自分から見た自分)について考える時間がありました。1 2

この活動では、「自分に正直であること」と「向き合う勇気」が求められました。
特に、これまで蓋をしていた気持ちや葛藤と再び向き合うことは、簡単な瞬間ではありません。しかし、参加した子どもたちはこの場が安心して自己をさらけ出せる空間であると感じることができました。
そして、「自己を表現しても受け止めてもらえるんだ」という温かな感覚が、彼らの内面の壁を溶かし、新たな挑戦への一歩を生み出しました。

このワークショップのファシリテーターからは、「自分自身を隠して仮面をつけて生きる必要はありません。自分に誠実に、正直に生きていきましょう」という力強いメッセージが送られました。「支えが必要だと感じたら、いつでも呼んでください。抱きしめてほしいときも私たちはそばにいます」と、子どもたちの心に寄り添う温かな言葉で結ばれました。2 2 2

私たち大人も、子どもたちと同様に別室でワークショップを実施しました。
この時間は、私たち自身、そして他者を改めて深く知り、信頼を育むために重要な準備の場となりました。
大人一人ひとりが「なぜここにいるのか」「本当に達成したいことは何か」というテーマについて率直に語り合い、自分たちが果たすべき役割を確認しました。その場には緊張感よりも温かな対話が広がりました。
また、大人たち自身も体験型のワークを通じて、互いの気持ちと立場を理解する姿勢が生まれ、チームとしての結束と信頼関係が強まる瞬間が見られました。

大人たちは決して「支援する存在」で終わらない。ともに歩み、寄り添う存在として、声を届ける準備を整えたのです。1J5A8386

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オンタリオ州の州議事堂で行われた公聴会当日。この特別な日は、子どもたちにとっても、彼らを見守る大人たちにとっても、忘れられない一日となりました。
この場には、カナダ・トロントへ来てから、子どもたちを見守り、支え続けてくれた約40名の大人たちが集い、子どもたちがその声を届ける瞬間を見守りました。

壇上に立った7人の子どもたちは、一人ひとりが自分の生い立ちや感じてきたこと、そしてその奥にある熱い想いを語りました。初めて脚光を浴びる緊張感が彼らの表情に垣間見えましたが、話し始めると、徐々にその場の雰囲気が変わり、会場全体に落ち着きが広がっていきました。子どもたちの言葉をまっすぐ受け止め、真摯に耳を傾ける大人たちの視線が、その安心感を育んだのでしょう。1J5A9453

子どもたちの言葉は、ときに自分自身をさらけ出す勇気を必要としながら、誰もが振り返る「自分の核にあるもの」を共有するものでした。そこには、夢を描く願望ではなく、「本当の自分を知ってほしい」という切実な思いが込められていました。
そして、彼らが語る内容はただの事実や情報ではなく、ここに集う大人たちへの信頼、そして未来への希望が溢れていたのです。

支える側の大人にとっても、この公聴会は重要な意味を持つ一日でした。
過去に子どもたちと関わりながら築いてきた関係性が、今この瞬間の子どもたちの勇気を支えていることを実感できた場でもありました。彼らの存在が、子どもたちがその心に秘めていた「伝える力」を発揮する助けとなったことは間違いありません。

公聴会は、子どもたちと大人たち双方が互いの存在を改めて感じ取り、未来への最初の一歩を踏み出す象徴的な場となりました。1J5A9263

子どもたちの語りには、自分の過去や背景に向き合うことで紡ぎ出された言葉が散りばめられていました。単なる一方的な訴えではなく、これまでの経験からの真実の声。子どもたちは、自分たちが直面している現実、そしてその中に根付いた”葛藤”や”望み”を率直に示しました。

児童養護施設や自立支援ホームでの暮らしで感じる対応の差や、声が思うように受け止められないことのしんどさ。これらの具体的な体験が語られるたびに、会場内には真摯な静寂が広がりました。どの言葉も、自分が生きてきた環境を振り返り、それを他者と共有しようとする勇気が感じられるものでした。

学校や地域、自分の暮らす”家”という「守られるべき場」で、守られなかった悔しさ、切なさ。大人の伝え方ひとつで当事者が悪者にされてしまう理不尽さや、多数派が正しくて少数派の意見は間違っているような文化があるのか。子どもたちは、その苦しさと不公平さを、まるで心の奥底まで会場に届けるように語りました。その一言一言は、決して抽象的なものではなく、リアルさを伴っていました。

──「なぜ大人の都合で妹弟と離れて暮らさなければならないのか。なぜ大人の都合で学校という信頼できる場所を奪われたのか。」──
過去に両親から離れることを余儀なくされ、妹や弟とともに保護された経験を持っていることを語ってくれる子がいました。その言葉に込められた疑問は、単なる個人的な経験を超え、社会全体が問われるべき課題という重みを持っています。
「家族」というつながり、「学校」という安心の場。それらを奪われることで子どもはどれほどの不安や孤独を抱えることになるのか──その辛さを自身の体験を通じて語っていました。

「信頼できる大人が一人でもいれば状況は変わると思う。そういった環境をつくってほしい」
この言葉は、社会がどれほど子どもたちの視点に寄り添えているのかを問いただすメッセージとも言えるでしょう。

子どもたちが紡いだこれらの言葉は、立場を超えて考えるべき課題であり、私たちが未来への政策や行動を見直すきっかけとなるものでした。そしてそれ以上に重要なのは、これまで声を届けることが難しかった彼らが、この場でその心の奥底を語る「場」が提供されたということ。公聴会は、彼ら自身の存在とその価値を改めて浮き彫りにした瞬間でもあったのです。1J5A9565

一方で、信頼できる大人と出会えたことで前を向けたという実感や、「普通」は一人ひとり違うという気づきも共有されました。多数派が正しいとされがちな空気の中でも、違いを恐れず意見を表せる社会であってほしいという願い、なぜ子どもが傷つく前に守れないのか、助けの求め方や選択肢をもっと学べるようにしてほしいという問いが、芯の通った言葉として響きました。

子どもたちの発表を聞いた後は、大人たちは一人ひとりの声を受け止め、対話をしました。

「勇気を出してここにきてくれてありがとう。」

子どもたちの勇気ある声への感謝と敬意、胸の内の揺れが率直に語られました。
「一人ひとりの”普通”や意見を尊重し、関係性を深める時間をつくりたい」「対話を続け、旅の後もつながっていたい」「“普通”という言葉に頼らず、つらいときは無理に笑わなくて良い」といったメッセージが続きました。

会の後半には州議事堂を見学し、歴史ある空間に触れました。高い天井や磨かれた木の質感に息をのみ、昼食の場では緊張がほどけ、見学の小さな発見を交わす時間となりました。1J5A9627

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公聴会が終わったその日の夕食には、「さよなら食事会」と題して、子どもたちを5日間支え、見守ってくださったカナダの方々との最後の集いです。
笑顔が広がる温かな場となり、これまでの時間を互いに振り返りつつ、新しい交流を築く場ともなりました。

子どもたちにとって、英語でのコミュニケーションという挑戦も、この特別な夜には欠かすことのできない要素でした。
トロントへ飛び込んだ日、言葉の壁の前で戸惑い、緊張から口を開くことを躊躇していた子もいました。しかし、この最後の食事会では心の距離が確実に縮まり、”伝えたい”想いを持った子どもたち自ら英語でのコミュニケーションに挑戦する姿がとても印象的でした。1J5A0320

子どもたちが英語で話すことに挑む姿は、この5日間で築かれた支えと信頼の証そのものでした。
こうした対話を通じて、国境を越えた絆や共感が育まれる瞬間が生まれていました。
この夜の出会いと挑戦は、子どもたちにとって「特別な記憶」となり、勇気を与えるものとなると考えます。

言葉はこの場だけでは終わりません。
ここで受け取った子どもたちの主張に、ピースワラベはこれからも向き合い、私たちにできることは何か、やるべきことは何かを、考え続けてまいります。

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