
「子どもの社会的孤立」という言葉を耳にしたことはありますか?家庭や学校、地域との関わりが薄くなっていくことで、孤独を感じて心を閉ざしてしまう子どもがいます。その背景には、虐待や貧困など家庭の問題や、友人関係のトラブルなどさまざまな要因が複雑に絡み合い、社会から気づかれにくいケースが少なくありません。
なぜ子どもの社会的孤立は生じてしまうのか。その実態を知ることは、支援の重要な第一歩となります。今回は子どもの社会的孤立について、その背景や要因、課題を解説します。
子どもの社会的孤立とは?

「社会的孤立」とは、人がさまざまな要因から他者とのつながり(交流の機会)を持たず、社会的に孤立することをいいます。
子どもの場合、主に家庭や学校、地域において周囲との関わりを持てずにひとりで過ごしていることが多く、子どもたちが抱える社会問題のなかでも特に解決しづらい問題のひとつとされています。
その背景には、以下の3つの課題が挙げられます。
- 子どもが声をあげられず周りが気づかない
- 学校組織の問題
- 社会的孤立が認識されておらず、子どもに支援が届かない
社会的孤立は、子どもにとって声を挙げたり、状況を言葉にしたりすることが難しいため、誰に・どのように助けを求めたらよいか分からず、自分の殻に閉じこもってしまう子どもが少なくありません。その結果、周囲が気づくことができず、見過ごされてしまう場合が多くみられます。
また、周囲の対応・認識にも課題があります。たとえば、学校が子どもの社会的孤立に気づいたとしても「家庭の問題だから」と、学校内の問題として取り上げてもらえないケースがあります。教師が抱える業務が多すぎて余裕がないなど、教師側の環境の課題も少なからず影響していますが、そもそも子どもの社会的孤立が深刻な社会問題であることが十分に認知されていないという現状もあります。
結果的に、声をあげられない社会的に孤立している子どもたちは、支援の対象からこぼれ落ちてしまうのです。
こうした学校も含めた子どもを取り巻く状況が子どもの社会的孤立を招く原因になっていることを認識し、理解を広めていくことが、早期発見・早期解決の糸口となります。
子どもの社会的孤立が生じる要因

子どもの社会的孤立が起きる要因には、さまざまなものがあります。ここでは、大きく分けて3つのポイントをご紹介します。
家庭環境
子どもの社会的孤立において、もっとも影響が大きいといわれるのが家庭環境です。社会的孤立を招く主な要因である一方で、例えほかに原因があっても、一番身近な家族が味方になり、相談相手でいてくれたら、社会的孤立を防げる可能性が十分にあるためです。
しかし、現実的には虐待・ネグレクト・貧困といった状況下にいる子どもや、親が忙しくて子どもとの時間がとれない家族は多く存在します。こうした家庭環境にいる子どもたちは、日常的に人と接する機会を失って人間関係に不信感を抱くようになったり、家庭内だけでなく、次第に学校の友人たちとも話が合わなくなって塞ぎ込んだりしてしまう傾向があります。こうした家庭環境が結果的に子どもを社会から孤立させてしまうのです。
友人関係・学校への不適応
家庭環境に加え、学校や地域での友人関係の悪化も、社会的孤立を生む主な要因になりす。根本的に家庭環境が関係している場合も多いですが、学校内でのいじめや些細なことがきっかけで孤立していく子どもは少なくありません。
また、集団生活やルールが守れない、勉強についていけないといった学校に適応できないことなども周囲と距離をとるきっかけになります。学校内で居場所がなくなると、次第に遅刻や欠席が目立つようになり、引きこもりがちになるのです。
成長・発達の障がい
子ども自身の成長や発達障がいなども社会的孤立につながるひとつの要因となりえます。これは、家庭環境や友人関係と比較すると目に見えやすく、助けが入りやすいかもしれません。しかし、介入が遅れたり周囲の認識や理解、助けが十分ではなかったりすると、特に友人関係の構築や学習面において影響が出やすく、子どもは孤立してしまいやすくなります。
こうした発達障がいが原因となる社会的孤立を防ぐには、家庭や学校などの関係機関との連携が特に大切になってきます。
子どもの社会的孤立が招く影響とリスク

子どもの社会的孤立は、周囲から気づかれにくく、長い間、孤独をひとりで抱えて悩む子どもが少なくありません。しかし、介入や支援の提供までに時間がかかればかかるほど、さまざまなリスクを伴うことになります。
社会的に孤立した状態が長く続くとどのようなリスクが生じるのか、みていきましょう。
心身の健康問題・発達への影響
まず最初に挙げられるリスクが、心身の発達や健康への影響です。孤独感や疎外感、悲しみの感情が強くなり、うつ病や不安障害といった精神的な病にかかりやすくなったり、不登校や引きこもりになったりする可能性があります。
社会的に孤立した状況は、精神的なストレスや睡眠不足、食生活の乱れ、引きこもりによる運動不足などにつながり、本来子どもの頃に育つはずの心身の成長や発達の妨げとなります。
学習面への影響
学習面への影響も少なくありません。社会的孤立は、他人との交流や成功体験が少ないため、物事への意欲が薄れて消極的になってしまいやすくなります。学習にも身が入らなくなり、授業に集中できず課題への取り組みもおろそかになりがちです。
また、不登校や引きこもりになれば、家庭でのサポートが得られない限り、自然と学習の機会が減っていくため、成績や進級、進学などにも影響してしまいます。
対人スキル・社会的スキルへの影響
子どもは特に友人関係や集団生活を通して、さまざまなコミュニケーション能力や協調性など、社会生活を営む上で必要なスキルを学んでいきます。
しかし、社会的孤立下にある子どもは人との関わりが少ないため、対人スキルや社会的スキルの習得が難しい傾向にあります。その結果、大人になっても人間関係を構築したり周囲の社会にも馴染めず、就職や就労にも影響を及ぼすことになります。
さらに就労がうまくいかないと安定した収入を得ることが難しくなり、貧困に陥るリスクも高くなるのです。
社会的孤立下にある子どもの特徴

社会的孤立下にある子どもは表面化しづらく、一見すると見分けがつきにくいかもしれません。もしも次のような様子が見られる場合、社会的に孤立している可能性が高いため、注視することが大切です。
- 感情表現が乏しくなる
- 人との関わりが減る
- 何事にも消極的になる
- 人がいる場所を避けたがる
- 言葉遣いや生活態度が悪くなる
人との関わりが減ると孤独感から感情表現は乏しくなり、何事にも消極的になって人との関わりをより避けたりするようになります。反対に、精神的ストレスから周囲の人にあたるようになり、言葉遣いや態度の悪さとなって表面化する場合も少なくありません。
また直接的な因果関係は高くないものの、以下のような変化が認められる場合も、気にかけてあげる必要があります。
- 遅刻、早退が増える
- 服装、身だしなみの乱れ
- 成績や提出物への影響
これらは、わかりやすい変化ではありますが、他の要因が複雑に重なり合っている可能性もあるため判断が難しいものです。しかし、どんな理由であれ、こうした事象は子どもが助けを求めているサインとなりますので、見かけたら配慮することが大切です。
まとめ
子どもの社会的孤立の問題は、子ども自身が声をあげにくかったり、まだまだ社会に認知されていなかったりすることで、支援が行き届いていません。しかし、子どもの些細なサインに気づくことで、多くの子どもたちを助けることができます。
まずはこうした社会問題が自分の身近なところにもあることを認識し、少しだけ意識して周りに目を向けてみることが、子どもが周囲とのつながりを持つきっかけとなり、安心して過ごせる社会を築くことにもつながるのです。
【参照】
厚生労働省|日本における社会的孤立の動向と課題・論点
社会的孤立・孤独の予防と多様な社会的ネットワークの構築|すべての子どもの社会的孤立・孤独・排除を予防する学校を中心としたシステムの開発
国立研究開発法人科学技術振興機構|すべての子どもの社会的孤立・孤独・排除を予防する学校を中心としたシステムの開発
大阪公立大学|子どもが社会的孤立・孤独に至る メカニズムの解明
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