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子どもの社会問題
2025.11.04
2025.11.10

「ケアリーバー」とは?児童養護施設を離れたその後に直面する課題とアフターフォローの実態

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高校を卒業し、周りの友人たちが家族に見守られながら新生活を送り始める一方で、不安を抱えながら一人でその日を迎える子どもたちがいます。児童養護施設など社会的養護の元で育った後に自立を迎えた「ケアリーバー」たちです。

ケアリーバーは、進学や就職の節目で支援が途切れやすく、孤独感を味わいやすいことから、近年では特に支援の必要性が注目されています。今回は、ケアリーバーが置かれている現状や私たち社会全体でできることを解説していきます。

この記事を読むと分かること

ケアリーバーとは?

「ケアリーバー」とは、児童養護施設や里親など社会的養護のケアのもとから離れた子どものことを言います。ケアリーバーは一般的に18歳になり高校卒業のタイミングで施設を退所あるいは里親から離れ、社会に出て自立することが求められます。

「18歳でひとり立ちする」というと、少し頼もしく聞こえるかもしれません。しかしながら、家族の支えがないままいきなり社会に出る若者たちにとっては大きな挑戦であり、不安を抱えながらのスタートになります。

進学や就職、新生活を一人で切り開いていかなければならないケアリーバーは、日々さまざまな壁に直面します。ケアリーバーたちは、少しでも多くの支えが必要なのです。

施設を退所したケアリーバーの進路

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ケアリーバーたちの施設退所後の進路は、大きく以下の3つに分かれます。

  • 進学(主な生活の拠点:一人暮らし)
  • 就職(生活の拠点:一人暮らし、社員寮など)
  • 措置延長(施設生活)

子ども家庭庁によると、令和5年度に高校を卒業した児童養護施設出身の子どもの進路は、大学・専修学校等への進学が約41%と、令和に入ってから最も高い進学率となりました。

■高等学校等卒業後の進路

進学就職その他
大学等専修学校等
児童養護施設児1,654人401人24.2%285人17.2%806人48.7%162人9.8%
全高卒者1,029千人596千人57.9%200千人19.4%154千人15.0%79千人7.7%
※児童養護施設児は家庭福祉課調べ。全中卒者・全高卒者は学校基本調査(令和6年5月1日現在)
参照:こども家庭庁|社会的養育の推進にむけて(令和7年7月)

しかし、高校生全体の約77%と比べるとまだまだ低いことがわかります。反対に就職は約49%と、高校生全体の15%と比べ高い記録です。

20歳未満まで措置延長が可能

進学、就職以外の選択肢として、生活や心身が不安定といった理由で特に必要と認められる場合、20歳未満まで措置延長(社会的養護の延長)ができるとされています。以前は1割以下と限りなく少ない状態でしたが、近年では少しずつ措置延長の活用を図る施設が増え、令和6年度は約27%の子どもが措置延長となっています。

ただ、措置延長となっても20歳を迎える頃には同じように自立して社会に出て行かなければなりません。進学か就職のどちらかを選択し、困難に立ち向かいながら一人で生活をしていきます。

ケアリーバーが直面する問題

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ケアリーバーは施設や里親から離れた瞬間から、十分な準備が整わないまま社会に出され自立を求められます。そのため、さまざまな問題に直面します。ここでは、彼らが直面する課題についてみていきましょう。

金銭面の不安

ケアリーバーが直面する問題の中で、最も多いとされているのが「金銭面の不安」です。

家族からの経済的支援を受けられないと、いきなり自分一人の力で家賃・光熱費・食費・学費などを稼いでいかないといけません。

稼ぐことへの不安だけではなく、自分で管理をしてうまくやりくりをすることが難しいと感じる人もいます。

精神的な不安

金銭面に次いで多いのが「精神的な不安」です。

ケアリーバーは、社会経験が少ないなかで自立を余儀なくされるため、日常的な話し相手や困ったときの相談相手を必要とします。

しかし、近くになかなか心の支えとなってくれる人が見つからず、やがて孤独感を感じるようになったり、親からの虐待やネグレクトなど不遇な扱いを受けて育った子どもは、大人への不信感が抜けない場合もあります。

そうした経験がコミュニケーションの問題となって表れ、進学先や職場の人間関係に支障をきたしてしまうケースも少なくありません。

就労の不安

近年では、ケアリーバーの約半数は正社員として就職していますが、残りの半数は安定した職に就くことが難しく、非正規雇用など不安定な収入のなかで生活をしています。

また、高校や大学に進学をせず中卒や高卒の場合、なかなか雇ってもらえないケースもあります。さらに人間関係や精神的な問題から離職率も高い傾向にあり、生活困難に陥ることも少なくありません。

保証人の不在

見落としがちですが、「保証人の不在」もケアリーバーにとって重要な問題となります。たとえば、実の親がいない場合や保証人になってくれる人がいない場合、アパートなど公的な契約ができない可能性があります。

多くの場合、これまでいた施設の施設長や里親が保証人となることができますが、契約の問題や社会的養護への認知の問題から断られるケースもあります。

また、未成年で施設を退所となった場合、賃貸やスマートフォンなどの契約もできません。施設や里親のフォローには限界があり、こうした保証人の不在問題に不安を抱えているケアリーバーも多いのが現状です。

施設退所後の国・自治体のアフターフォロー

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18歳を迎え、たくさんの不安を抱えながら一人で社会へ出て行くケアリーバーを支えるため、国や地方自治体はさまざまな政策を行っています。ここでは、主となる一部の支援についてご紹介します。

身元保証人確保対策事業

「身元保証人確保対策事業」は、アパート契約時に保証人を施設長や里親が引き受けた場合、万が一の費用を全国社会福祉協議会が補償する制度です。

損害保険契約を社会福祉協議会が契約者として締結することによって身元保証人を確保することが目的で、ケアリーバーたちの社会的自立の促進を図ります。

自立支援資金貸付事業

「自立支援資金貸付事業」とは、住居や生活費などを確保することが困難な施設退所者に対し、生活費や家賃、資格取得に必要な費用などを無利子で貸す制度(全額返済)です。

これにより生活の基盤ができるため、安心して日常を過ごせ、進学や就職も目指すことができます。

受けられる金額や期間は限られていますが、親からの仕送りや養育拒否等による金銭や生活面の心配がなくなり、ほかの子どもたちと同じように、自分の夢を諦めずに済む子どもたちがたくさんいます。

児童自立生活援助事業・就学者自立生活援助事業

「自立援助ホーム(児童自立生活援助事業)」とは、児童養護施設や里親から離れた義務教育終了後〜20歳未満の子どもを対象としています。共同生活を送りながら日常生活の援助に加え、自立に必要な生活指導や就職などのサポートを受けることができる仕組みです。

20歳からは「就学者自立生活援助事業」として、大学等に通う者に対して対人関係・健康管理・金銭管理・食事など日常生活のあらゆる面で必要な相談や援助、指導を行います。

また、家庭環境の調整や教育機関との連携といったサポートもしてくれるため、安心して学生生活を送ることができるようになっています。

退所児童等アフターケア事業

都道府県によっては「退所児童等アフターケア事業」という支援も行っています。

児童福祉や就業支援に精通したスタッフを配置し、ソーシャルスキルトレーニングや相談支援等を行ったり、ケアリーバー同士が交流できる機会を設けたりしています。

生活や就業などの悩みや不安に対しさまざまな面からアプローチしていけるため、ケアリーバーたちの安心安全につながるのです。

ケアリーバーに対して私たちができること

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ケアリーバーは、経済的困窮や社会的孤立などに迫られやすく、常に不安と隣り合わせで生活している方も少なくありません。彼らが安心して自立ができるようになるためには、周囲の支えが必要です。

ケアリーバーの支援として各地方自治体や民間団体ではさまざまな活動を行っているため、募金や物資の提供といった形で金銭面・生活面でのサポートのほか、ケアリーバーを支援する団体への寄付を通して支えることもできます。

たとえば支援をしている機関や団体を把握したり、地域での見守りや相談相手となったりするだけでも、ケアリーバーにとってはとても心強いものです。

まとめ

ケアリーバーは「自立」という言葉の裏に、経済的な不安や孤独など多くの問題を密かに抱えています。そうした彼らに必要なのは、施設を離れた後でも安心して暮らしていける環境です。

家庭に頼りにくいからこそ、社会全体の理解とサポートが欠かせません。私たちが紡ぐ小さな支援の輪が、ケアリーバーたちの明日やその先の長く続く未来を支える力になります。直接的でなくともできることはたくさんあります。この記事がひとりでも多くの方がケアリーバーについて知ってもらえるきっかけになれば幸いです。

こども家庭庁|社会的養育の推進にむけて(令和7年7月)
厚生労働省|社会的養護における自立支援に関する資料
こども家庭庁|就学者自立生活援助事業の実施について

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