小学2年生から児童養護施設で育った倉内さん。
困難な少年時代を乗り越え、大学進学や司法試験に挑戦してきました。現在は国際NGOで働きながら、社会人サポーターとしてピースワラベの活動を支援し、子どもたちに「信じてもいい世界」を届けています。
今回は、倉内さんに、子どもたちに伝えたい想いや、自らの歩みについてお話を伺いました。

児童養護施設から司法の現場、そして国際NGOへ
東京都で生まれた倉内さんは、6歳のときにお父さまの事業の失敗をきっかけに、家族が離散。お母さまと弟とともに夜逃げ同然で転居し、経済的な困難と母子ともに体の弱さから、小学2年生の秋に児童養護施設へ入所しました。
そこから高校3年生までの約10年間を施設で過ごします。
「小学生の頃は上級生からのいじめがひどく、苦しい日々が続きました。家庭がある“普通の子”たちが、社会に反発している、いわゆるヤンキーの子たちに対して、幸せな生活を送っているのに何故弱い者いじめをするのだろう、とモヤっとした気持ちがありました。中学生になると体も大きくなり、今度はヤンキーたちに対して自分が暴力を振るう側になってしまいました。」
そんな荒れた日々の中で、倉内さんの人生を変える出会いがありました。
根気強く寄り添ってくれたカウンセラーの職員が、早稲田大学で使っていたという政治学の教科書『市民の政治学』を手渡してくれたのです。
「最初は茶化しながら読んでいたんですが、“思想で世界が変えられる”という一文に衝撃を受けました。『暴力じゃなくても、社会を変える方法があるんだ』と気づいた瞬間でした」
その日を境に本を読みあさるようになり、マルクスやヘーゲルといった哲学書を独学で学ぶようになった倉内さん。
高校を卒業後、福祉の支援も受けながら慶應義塾大学に進学します。
「周りはお金持ちばかりで、自分との違いに落ち込みながらも、学費を自分で稼ぎ、勉強を続けました。大学時代は決して華やかではなかったけれど、自分の力で生きることを学んだ時間でした」
大学卒業後は保険会社に就職し、のちに大手通信会社に転職。
社会人として安定した生活を送る一方で、「施設出身であることを言えない自分」に気づきます。
「過去を隠すように働いていたけれど、それでは本当の意味で前に進めないと感じたんです。 自分の過去を受け入れられるような仕事をしたい——そう思い、法律の道を志しました」
司法試験の予備試験に挑戦し、2回目の挑戦で合格。
検察官として少年事件を担当するようになります。
しかし、かつての自分と重なるような事件に直面したことで、心身の限界を感じ、職を離れることに。
「事件記録を読めなくなってしまったんです。まるで血が見られない医者のようで……。続けるのは難しいと感じました」
その後は企業の法務職を経て、現在は国際NGOで法務担当として働いています。
そして、自らの経験をもとに、「ピースワラベ」に社会人サポーターとして参加しています。

自分と同じ境遇の子どもたちへ―支援を決めた2つの理由
「ネガティブな連鎖を、ポジティブな循環へ」
支援に参加した理由を尋ねると、倉内さんは2つの思いを語ってくれました。
「ひとつは、自分自身が児童養護施設で育ったから。もうひとつは、ピースワラベが“施設出身の子どもが成長し、次の世代を支える”という循環をつくろうとしているところに強く共感したからです」
倉内さんは、この「ポジティブなサイクル」が持つ意味をこう語ります。
「児童養護施設にいる子どもたちは、多くの場合、家庭という“ポジティブなサイクル”から外れてしまった子たちです。 でも、彼らが今度は“誰かを支える側”になれる循環が生まれれば、『この世界は信じてもいい場所なんだ』と感じられるようになる。 それが、子どもたちにとって本当に大きな意味を持つと思うんです」
かつての自分に重ねて―子どもたちへ贈る言葉
「信頼を取り戻すきっかけを」
最後に、子どもたちへの想いを伺いました。 「大人や社会、制度、場所——そういうすべてを一度失ってしまった子どもたちに、もう一度“信頼できる”と思える機会を届けること。 それが、ピースワラベのような取り組みの価値だと思います。」 かつて世界を信じられなかった少年が、いまは「信じてもいい世界がある」と子どもたちに伝える側になりました。 倉内さんの歩みは、まさにその言葉の力強さを証明しています。
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