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子どもの社会問題
2025.11.28
2025.12.01

“つながり”と“安心”を与える子どもの居場所づくり。なぜ必要なのか、その背景と意義、課題を解説

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近年、子どもの貧困や孤立、家庭や学校でのストレスなど子どもを取り巻く環境は複雑さを増し、家庭や学校とは別に“自分らしくいられる時間”や、“安心できる場所”を必要としている子どもたちがいます。そのなかで求められるのが、何かしら悩みを抱える子どもたちが安心して過ごせる「居場所づくり」です。居場所の形はさまざまですが、いずれも子どもが前に向いて生きていくことを支える重要な役割を担っています。

本記事では、子どもの居場所づくりの背景と意義、そして今後の課題について解説します。

この記事を読むと分かること

子どもが安心して自分らしくいられる「居場所」

子どもにとって“安心できる居場所”とは、孤立を防ぐだけでなく、自己肯定感を育み、ありのままの自分でいられる、心のよりどころになります。

本来、子どもは家庭を中心に学校や地域など多くの場所で人との関わりを経験します。しかし、近年は家庭環境の問題や地域のつながりが希薄化し、子どもが自由に遊んだり悩みを打ち明けたり人と接する機会が失われ、子どもにとっての居場所も減少しつつあります。

居場所が減るということは、子どもの健やかな成長や未来に関わる問題へとつながっていってしまう可能性が考えられます。それを防ぐためには、どんな子どもでも気楽に足を運べて自分らしく幸せに過ごせる、子どもが主体となれる居場所を確保していく必要があるのです。

居場所づくりで大切なこと

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子どもの居場所づくりは「支援」や「管理」よりも、心を許し合える関係性を大切に「受容」や「個性を尊重」するといった対応が求められます。

子ども家庭庁のアンケートによると、子どもが求める居場所には次のようなものがあります。

このようにどのような環境を「自分の居場所」と感じるかは人によって異なり、人と話すのが好きな子もいれば一人で静かに過ごすほうが好きな子、たくさん遊びたい子などさまざまです。

また、家庭環境や学校が居づらいと感じる子や、人間関係や学習に悩む子、発達に遅れのある子など、差別することなく取りこぼしがないように、すべての子どもたちが安心・安全に過ごせるように、環境や言動に配慮して居場所づくりを考えていくことが大切です。

子どもの居場所にはどんなものがある?

具体的に、家や学校以外で子どもの居場所には、どのようなものがあるのでしょうか。子どもにとって安心して過ごせる居場所には、さまざまなカタチがあります。ここでは、代表的な子どもの居場所についてみていきましょう。

子ども食堂

地域の子どもたちが安心して過ごせる居場所のひとつである「子ども食堂」は、子ども一人で利用でき、無料または低価格で栄養のある食事をとることができます。

また、一般的に家庭の経済状況に関わらず利用でき、誰でも気軽に足を運ぶことができることも特徴です。そのため「栄養のある食事をしたい」「家で一人で過ごすのが不安」「誰かと話をしたい」といった、さまざまなニーズを持つ子どもが訪れます。

子ども食堂では、みんなと温かいごはんを囲むだけでなく、会話、遊び、学習、相談の場ともなり得るため、地域とのつながりも育みながらホッとできる時間を過ごすことができるのです。子どもたちにとっては見守ってくれる大人が増える機会にもなり、子ども食堂がきっかけでほかのサポートにつながるケースもあります。

無料学習支援

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学習支援は、さまざまな理由により学習に困難を抱える子どもたちに対して、NPO法人やボランティア団体が中心になって無料でサポートする支援です。

対象となるのは、主に家庭の事情(貧困)や不登校、発達障がいなどがある子どもたちです。なかでも、学習支援を利用する子どもの多くは家庭の事情によるものが多い傾向にあります。

たとえば、経済的貧困から参考書や問題集を購入することができない、塾や習い事に通うことができないといった家庭の子どもたちは、周りの子と比べ学習の機会や意欲が減ってしまいがちです。その結果、将来の進学や就職にも影響し、所得格差を生むことにもつながってしまいかねません。

学習支援は、こうした事態を防ぐために勉強のサポートをしたり、また忙しい保護者に代わって宿題を見たり、進学の相談などにものります。不登校や学校への不適応に悩む子どもたちにとってこうした環境は、ストレスやプレッシャーの少ない環境下で学習できることから、学習の遅れを取り戻す機会となるのです。

そのほかにも、発達の遅れがある子どもには、個人に合わせた学習方法やペースを提供し、一つずつできることを増やしていくことで、学習の定着や学ぶことの楽しさを知ってもらう機会にもなります。

また、学習支援の目的は、学力の向上だけではありません。味方になってくれる大人や同じ環境の子どもたちと積極的に関わることで、コミュニケーションスキルやチャレンジ精神を養い、自己肯定感を高めて自信をつけてもらうことにもつながります。「会話」や「居心地の良い存在」を通して安心できる居場所にもなるのが、無料学習支援です。

オンラインコミュニティ

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インターネットが普及している近年では、オンラインコミュニティも子どもにとって大切な居場所になりつつあります。

実際にオンラインを駆使した居場所づくりをしている団体も増えてきており、誰一人として取り残すことのないよう子どもたちに寄り添い活動しています。

自宅を始めとするオンライン環境が整う場所であればいつでもどこからでもアクセスできるため、全国からさまざまな困難を抱えた子や居場所を求める子が集まるのが特徴です。

オンラインコミュニティのメリットは、こうしたアクセスの容易さだけに限りません。対人関係が苦手な子にとっては顔を合わせないコミュニケーションが心地よく、実生活において直接の関わりがないからこそ話せることもあります。

身近に心を許せる友だちがいない子もオンラインであればさまざまな人と関わりを持つことができ、そこが自分らしくいられる居場所となる場合もあるのです。

そして、オンラインで多様な事情を持つ子どもたち同士で関わることで、学校や身の回りのことなどに「もう少し頑張ろう」「挑戦してみよう」と、一歩踏み出すきっかけになることもあります。オンラインは、さまざまなリスクが気になる大人もいるかもしれませんが、子どもの意志を尊重し、理解を示しながら子どもの欲求を満たしていけるよう見守っていくことが大切です。

地域社会

近年では昔のような近所づきあいは格段に減ってきていますが、本来地域は子どもたちにとってもっとも身近な居場所です。

近所の子ども同士によるつながりや大人による見守りが、無意識のうちに「自分のいつもの場所」となっていることもあります。お祭りやクリスマス会、子ども会といったその地域ならではのイベントは、子どもたちにとって老若男女さまざまな人と関わることのできる貴重な場となります。

また、塾や習い事、近所のショッピングモールなども、子どもが「過ごしやすい」「リラックスできる」と感じることができれば、それもその子にとっては大切な地域の「居場所」になります。

居場所づくりの現状と課題

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子どものより良い未来のために求められる居場所づくりには、課題も少なくありません。ここでは、子どもの居場所づくりでどのような課題があるのかみていきましょう。

現場の人手不足

第一に、各現場における人手不足が大きな課題となっています。その背景には資金不足や担い手の高齢化、中立性の確保の難しさなどさまざまな問題があります。

人手不足は、子どもたちを支援する団体や活動の場だけでなく、子どもたちにとっても選択肢が減り、子どもたちが孤立化していく原因にもつながってしまいます。担い手不足を解消することが、居場所づくりを進めていく上で第一の課題と言ってもよいでしょう。

背景的要因と子どもの自身の声

「居場所がない(ほしい)」と感じる子どもたちの多くは、複雑な家庭環境(貧困、虐待、ヤングケアラー等)の悩みを抱えている場合が多い傾向にあります。それらは子ども自身の自己肯定感や周りの大人への信頼の低さ、人との頼りづらいという思いにつながりやすく、声を上げられないケースが少なくありません。

誰にどう頼ったらいいのかわからないこと、そもそも「頼ろう」と助けを求めることすら想像できない子どももいます。そんな子どもたちが勇気をだして一歩踏み出すことができるように、学校や地域での普及活動にも尽力していかなければなりません。

子どもの居場所をつくるために

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課題を解消し子どもの居場所をつくるためには、どうすればよいのでしょうか。私たち大人にできることを考えてみましょう。

多様な担い手の協働

子どもの居場所づくりを持続的なものにしていくためには、ひとつの機関だけで支えていくことは難しいことです。そこで求められるのが、多様な担い手の協働です。

学校、行政、NPO団体、地域などが連携しながら子どもたちを見守り情報共有をすることで、現場の人手不足を補うことができます。

子どもの日常や変化に最も近い存在である学校をはじめ、制度や支援の仕組みを整える役割を担う行政、子どもに寄り添った柔軟な支援を届けやすく、新しい場や活動を生み出すこともできる地域団体やNPO法人が、それぞれの強みを重ね合わせれば実現できることはぐっと広がり、子どもが安心して選べる居場所の幅も大きくなります。

また、協働が進むことで支援者同士が抱え込むことを避けられ、困難を抱える子どもに必要なサポートが迅速に届けられるようにもなります。情報を共有し、「この子にはどんな支えが必要だろう」と一緒に考え合える仲間の存在が、子どもにとって安心な居場所づくりにつながっていきます。

協働は、派手な取り組みである必要はありません。それぞれの立場でできることを持ち寄り、定期的な会話や連絡などゆるやかでも継続的につながりを保つことが、結果として子どもを見守る大きな力になっていくのです。

地域全体の理解と見守り

多様な背景を持つ子どもたちが心を落ち着け、自分らしくいられるためには、やはり地域の理解と支援が欠かせません。

子どもたちは日々、学校と家庭を行き来するだけでなく、地域の中でさまざまな大人や環境と出会いながら成長していきます。その過程で、「ここにいていい」「困ったときは頼っていい」と思える空気が地域全体にあることは、子どもたちにとって大きな安心につながります。

地域の理解が広がれば、子どもの居場所づくりに挑戦する団体や支援者が活動しやすくなり、運営の継続性も高まります。特別なスキルがなくても、挨拶を交わしたり子どもの存在を肯定的に受け止めたりするだけで、地域はやさしく子どもたちに寄り添える環境になるのです。

たとえば、回覧板等を使用して「子どもの居場所」や「居場所づくり」に関する情報共有をすることで、いざという時に子どもを救うこともできるでしょう。地域の目線や継続的な支援を重ねていくことから、子どもたちの未来を支える土壌が生まれていくのです。

まとめ

居場所は、子どもが安心して心をゆるめ自分のペースで過ごせる大切な空間です。そこに特別な設備がある必要はなく、暖かい空気と子どもを尊重する姿勢があれば、それだけで貴重な居場所となることがあります。

その場を支えるのは、子どもを支える周りの大人と地域のつながりです。ひとりで抱え込む子が出ないように小さな居場所があちこちに広がることが、子どもたちの未来を守る力になります。私たちができる一歩を積み重ねながら、誰もが「ここにいていい」と思える環境を育てていくことが、子どもの未来を創造していく力へとなっていくのです。

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