カナダの公聴会の体験から、日本での報告会。
子どもたちの声がつながった一日。
児童養護施設や離島で暮らす高校生たちが参加した「Study in America(SIA)」スタディツアー。
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帰国後の学びを深め、そしてそれを支援者の皆さまへ届けるため、事後研修と報告会を同日に開催しました。
この一日は、子どもたちがカナダで得た“気づき”と“勇気”が、日本で確かな形になっていく時間となりました。
「子どもの権利」をめぐる対話から始まった時間
午前の事後研修には、SIAカナダ現地コーディネーターの菊池幸工さんにもご参加いただきました。
菊池さんは、カナダと日本を行き来しながら、社会的養護下にある子ども・若者の国際交流をつないでいる方です。全国子どもアドボカシー協議会のアドバイザーとしても活動し、日本各地で「子どもの権利擁護」に関するワークショップや講演を行っています。
この日の最初のテーマは、子どもたち自身の身近な事例をもとにした「子どもの権利」の学び。
日常の中の“あれって、どうなんだろう?”という小さな違和感から、権利を考えていく時間が始まりました。

子どもの権利について説明をする菊池幸工さん
「子どもより大人の方がなんでも知っているのか?」
「親は子どもの日記を読んでいいのか?」
そんな日常に潜む問いを、
グループごとに「正しいか/正しくないか」だけでなく、
“なぜそう思うのか”まで深く話し合いました。
「子どもより大人の方がなんでも知っているのか?」
という問いに対しては、
「経験の差で大人が知っていることもある」
「大人と子どもでは視点が違う。必ずしも大人が上ではない」
とそれぞれの考えや意見をディスカッションしながら、それぞれが互いの意見に真剣に耳を傾けながら、対話を積み重ねました。

子どもたち自身が考え、他者の話を聞く中で
「権利って、対話やコミュニケーションが大切だよね」
と、ぽつり。
この研修では、一人ひとりが、自分の言葉で考え続ける姿が印象的でした。
研修の終盤では、参加者の1人から
「そもそも“大人”って何ですか?」
という問いが上がり、場がしんと静まり返る場面も。
その問いも、それぞれが真剣に自分の想いを語る、熱い場となりました。
5年後の姿を描く「Shared Vision」
研修後半は、5年後の「自分・私たち・社会」の姿を描くShared Vision。

子どもたちの口からは、
「この関係がずっと続いてほしい」
「子どもが信じられる大人に出会える社会にしたい」
という、未来への願いが自然と語られました。

自分たちの経験を次世代に繋げたい。そんな願いが込められていました。
「Shared Vision」を行い、柔らかな希望が広がり、
午後の報告会へと心が整っていくような時間でした。
カナダ渡航で生まれた“気づき”を、
今度は大人へ届ける
同日夕方からは、
日頃からSIAをはじめ、ピースワラベを応援してくださる支援者の皆さまをご招待し、報告会を開催しました。
代表・大西の挨拶、SIAディレクター白井智子さんからのレポートに続き、いよいよ子どもたち一人ひとりがステージに立ちます。

その中で話した施設で生活をしている高校2年生・Mさんの言葉が、会場の空気を変えました。
「渡航前の私は、人前に出るタイプでもなく、不安も大きかった。
でも、英語を学んできた自分にとって、このチャンスは絶対に掴みたいと思いました」
「カナダで問いを立てながら生活し、スタッフさんたちと対話して、“声をあげる大切さ”を知りました。
帰国後、施設に改善してほしいことを自分の言葉で伝えることができました。
昔の私なら絶対にできなかったことです」
会場の大人たちは静かに耳を傾け、一言ひと言を受けとめていました。
支援者の皆さまとの懇談会
発表後は、支援者の方々と子どもたちが直接交流できる懇談会へ。

支援者の方々は、子どもたちの歩んできた道のりにゆっくりと声を傾け、
時に涙、時に笑顔を溢しながら、貴重な時間を共に過ごしました。
緊張していた子どもたちの表情も、
次第に、安心したようにほぐれていきました。

カナダで公聴会に参加し、自分の声を形にする経験をした子どもたち。
この日、日本でも同じように「声が届く」場を体験することができました。
現場職員が感じた、子どもの “ 変化の大きさ ”
今回の報告会には、SIAに参加した高校生が暮らす児童養護施設から、担当職員さんもご参加くださいました。
その中で、高校3年生・Mさんを担当する職員さんが、施設職員の代表として支援者の皆さまへ思いを伝えてくださいました。
語られた言葉には、Mさんの変化の大きさと、このプロジェクトの価値が凝縮されていました。
「帰国直後、あれほど疲れていたはずなのに、車の中でずっと楽しそうに話してくれたんです。
その表情を見た瞬間、“あぁ、本当に行かせてよかった”と心から思いました。」
「私たち児童養護施設は、“安全”を守るあまり、子どもに新しい経験をさせることに慎重になりすぎてしまうことがあります。
でもMさんを見て、“経験と出会いこそが子どもを成長させる”という当たり前のことを、改めて思い出させてもらいました。」
「今回のプロジェクトは、彼女の価値観を揺さぶり、表情まで変えてしまうほどの力を持っていた。こうした機会こそが、彼らの人生には本当に必要なんだと感じています。」
職員さんは最後に、こう締めくくりました。
「ぜひ、このプロジェクトをこれからも続けてほしい。
私たち職員も、一緒に学ばせていただきたいと思っています。」
子どもたちの変化を最も近くで見守る職員さんの言葉は、
SIAが子どもたちの人生に与えている影響の大きさを、力強く伝えてくれました。
彼らの挑戦は、まだ始まったばかり。
子どもたちにとって、この一日は
「学ぶ」→「考える」→「伝える」
という流れが自然につながり、子どもたち自身が成長を実感する時間になりました。
私たちピースワラベは、
これからも体験格差を生じている子どもたちのそばで、
“声をあげても大丈夫なんだ”と思える居場所をつくり続けます。
そして、その経験をした彼らが安心して飛び立てるように
伴走支援を行い続けます。
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