
同じ日本で暮らしていても、日々の食事や医療、教育、学校や各家庭で得られるさまざまな体験など、当たり前と思われるような生活を送ることができない人がいます。この状況が続くと、安心して日々を生きることが難しくなり、心身の健康だけでなく将来、人とのつながりなどにも影響を及ぼす可能性があります。
こうした状況は、なぜ生まれてしまうのでしょうか。要因のひとつに「相対的貧困」という社会問題が挙げられます。今回は子どもの成長にも深く影響する相対的貧困について、その背景や現状について解説します。
相対的貧困とは

「相対的貧困」とは、どのような状態を表しているのか、はじめに概要を解説していきます。
相対的貧困とは、ある特定の国や地域のなかで他と比較して大多数よりも収入や資産が少なく、生活が不安定で貧しい状態を指します。具体的には「国民の年間所得の中央値の50%に満たない所得水準」で生活している(せざるを得ない)状態です。
相対的貧困家庭では、たとえば多くの一般家庭にある生活必需品を買えなかったり、家族での旅行や団らんなどの経験ができなかったり、なかには学校の給食費を払えない、修学旅行に参加することができないといった事例なども報告されています。
「絶対的貧困」との違い

「絶対的貧困」とは、衣食住をはじめとする生活全般において”最低限度の生活”を送ることさえできない危機的状況を表しています。
世界銀行は、この”最低限度の生活”を、具体的に「一人当たり一日2.15ドル(日本円で約340円※R8.1.21時点)未満で生活すること」と定めています。
このラインは、かつて1.90ドル(日本円で300円)でしたが、日々変動する生活に係るコストを鑑みて2022年に2.15ドルに改訂されました。これまで1.90ドルで購入できていたものや利用できていたサービスの価格が、2.15ドルまで高騰したためです。
世界銀行によると、2019年には推定約6億4,800万人が極度の貧困状態にあったとされており、貧困ラインが改訂された後も大きく減少することはありません。絶対的貧困は衣食住がままならず、さらには必要な医療が受けられずに生命を維持することが極めて困難であるため、特に脆弱な子どもの生存率などにも大きく影響する、深刻な問題となっています(*)。
絶対的貧困は、発展途上国に多く見られ、周囲から見ても危機的な状態であることが把握しやすいといった特徴があります。それに対し、相対的貧困は比較的、先進国に多く見られ、また周りからは“貧困状態”であることが分かりづらいことも多く、支援に結びつきにくい、という課題があります。
*)世界銀行|世界の貧困に関するデータ
相対的貧困の背景と課題

なぜ相対的貧困は起きてしまうのでしょうか。ここでは、原因と相対的貧困が引き起こす問題について考えていきます。
【背景】相対的貧困はなぜ起きてしまうのか
相対的貧困に陥ってしまう主な原因として「低所得」が挙げられます。少子高齢化が進み、低賃金の仕事や非正規雇用が増加したことによって経済格差は広がり、一部の人は安定した収入や職を得ることが難しくなってきています。
また未婚や離婚によるひとり親家庭が増えてきていることも、相対的貧困が増えている要因のひとつといわれています。子育てや家事と両立するために就労時間や雇用形態が限られてしまったり、養育費が支払われなかったりといった問題などに直面し、相対的貧困となってしまう家庭が少なくないのです。
そのほかにも、当事者が周囲の目を気にして助けを求めることができなかったり、そもそも貧困の自覚がなかったりすることで、受けられるはずの公的な援助にアクセスできていない状況なども、相対的貧困が増加傾向にある要因となっています。
【課題】相対的貧困が引き起こすもの

では相対的貧困によって、具体的にどのような問題が発生しているのでしょうか。
最も大きな問題として、子どもが成長期に必要な食事が十分に食べられないことが挙げられます。絶対的な量が足りないだけでなく、インスタント食品やコンビニ食などに頼ることも多くなって栄養が極端に偏ってしまうため、結果として健康面に悪影響を及ぼすことが考えられます。
また、経済的な理由から医療機関にかかることができない、あるいは「この程度なら…」と医療機関にかかることを控えてしまうことで健康に支障をきたしてしまうというケースもあります。
健康面のほかにも、相対的貧困家庭の多くは教育格差や体験格差といった問題も抱えることになります。相対的貧困家庭の子どもの多くは、好きなことができずに我慢を強いられ、教育なども含めた本来経験できるはずのさまざまな体験をすることができません。
さらにこうした状況が続くことで、他者とコミュニケ―ションをとる機会なども少なくなり、本人の自己肯定感の低さといった性格形成などにも深く影響するようになるのです。
【関連記事】子どもの「教育格差」「体験格差」が与える影響とは?“見えにくい”教育の壁を考える
日本における相対的貧困の現状

日本は、ほかの先進国と比較して相対的貧困率が高いと言われています。厚生労働省の令和3年の調査では、日本の約15%の世帯が相対的貧困に相当し、社会における標準的な生活を送ることが困難な状態にあることが発表されました。
“15%”という数字は、国民の6〜7人に1人は相対的貧困に直面しているということになります。OECD(経済協力開発機構)によれば、現在の日本においては、年間所得127万以下の世帯が相対的貧困のラインです(*)。2000年以降の推移を見ても日本の相対的貧困率は15〜16%とほぼ横ばいで記録されており、減少に至らないのが現状です。
*)OECD|Poverty rate
相対的貧困を解決するために何ができるのか

相対的貧困の問題を解決することは、そう簡単ではありません。しかし、国や私たち自身ができることはまだまだ存在します。ここでは、相対的貧困の解消につながる可能性のあるものを見ていきましょう。
就労・再就職支援|所得と雇用の安定を支援する
相対的貧困の解決への一番の近道は、最低賃金の引き上げ、非正規雇用の待遇改善(社会保険の加入や賃金引き上げ、賞与など)などが挙げられます。しかし、これらは周囲のサポートでできることではなく、この改善を担う国や地方公共団体としてもそう簡単にはいかないのが現状です。
こうした状況のなかで、所得や雇用を安定させる就労支援やスキルの取得、ひとり親・障害のある人なども対象とした、再就職支援などの必要性が高まってきています。就労や所得の改善が遅々として進まないなかでも、当人が就労につながるさまざまな訓練を受けたり、周囲が困っている人をこうした援助制度につなげたりすることが、相対的貧困の解消につながることが期待されます。

社会保障制度の周知|支援を必要とする人に必要な支援をつなげる
相対的貧困の原因のなかには、自身にその自覚がなかったり利用できる制度やサービスの情報を得られなかったりすることも挙げられます。また、周囲の目を気にして生活保護や各種給付金(支援金)、家賃補助などを利用しづらいという人も少なくありません。
こうした背景から、まずは相対的貧困状態にあるご自身が状況を理解して受け止め、さまざまな支援や情報を知ることが求められます。当人が偏見や気遅れすることなく「一歩踏み出そう」という人たちを増やすことが大切です。
たとえば、地域の回覧やSNSなどを通して、さまざまな支援制度があることを広めて、本当に困っている人が必要な制度にスムーズにアクセスできる環境をつくっていくことも周囲ができる解決策のひとつと言えるでしょう。
寄付・ボランティア|子どもの貧困を支える
相対的貧困と常に隣り合わせで挙げられるのが、子どもの貧困です。現代の日本では子どもの貧困が大きな問題となっており、満足のいく生活を送れない子どもたちが増加傾向にあります。
相対的貧困家庭の子どもが直面する教育格差や体験格差、また将来の貧困の連鎖を防ぐためにできることは少なくありません。たとえば、児童福祉手当や母子父子寡婦福祉資金貸付といった、国や都道府県、地方公共団体による教育費の負担軽減といった制度のほか、食事や居場所を提供する子ども食堂やNPO法人などが行う学習支援などは、子どもの心身の健康や学力、将来の選択肢の幅を広げることの大きな助けとなります。

少しでも安心できる生活や子どもらしい生活を提供したいという思いから、近年はこうした子どもの支援を行う団体が増えてきています。
こうした支援活動に寄付をしたり、ボランティアとして参加したりすることも、相対的貧困を減らしていくことにつながります。寄付には金銭的な支援だけでなく、たとえば物質的な支援等(食品や衣類、生活用品等)も含まれ、どこかで助けを求める子どもたちの支えとなるのです。
子どもたちを支援する団体の多くは、活動を継続していくための資金だけでなく、ボランティアが不足しているケースが多く、さまざまな団体で募集しています。自分たちの暮らす地域で、貧困に苦しむ子どもたちの今と未来を支えるお手伝いをする方が、少しでも増えれば幸いです。
【関連記事】貧困が子どもに与える影響とは?知られざる日本の現状と私たちにできること
まとめ
今回は日本の「相対的貧困」の定義や背景、現状や解決策について解説しました。貧困というと、遠い国の話でなんとなく自分には関係ないと感じている方が多いと思いますが、実は日本でも深刻な社会問題として存在しています。
私たち一人ひとりが現状に目を向けて理解・認識し、改善に向けてできることを少しずつ積み上げていくことが、日本の相対的貧困率を下げる後押しとなります。将来の子どもたちのためにも、”自分事”として支える立場になる方が増えていくことを願っています。
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