
大人と同じように、すべての子どもには平等に与えられる「権利」があり、この人権は子どもたちが安心して健やかに生きるために社会全体で守られなければなりません。しかし、家庭や学校、地域社会などさまざまな環境の中で、時に子どもの権利が十分に守られていない場合があります。
今、子どもたちの生活や安全はどのように守られ、気持ちや意見は尊重されているのでしょうか。本記事では、子どもを取り巻く環境をふまえながら「子どもの権利」について解説します。
「子どもの権利」とは
すべての子どもは生まれながらにしてさまざまな権利を持っています。「権利」は子どもたちが健やかに、そして幸せに暮らし成長していくために必要なものです。
たとえば、身体的・精神的な安全が守られること、医療や教育を受けられること、自分の気持ちや意見が尊重されること、こうした子どもの権利を社会全体で大切に考え、しっかりと守られるように大人は努めていかなければなりません。
国連が定める「子どもの権利条約」

子どもの権利は、さまざまなカタチで守られています。その核となるのが「子どもの権利条約」です。
第二次世界大戦を経て「人権」という言葉や考え方が価値あるものとして認められるようになり、世界人権宣言や複数の差別撤廃条約が採択されてきました。
それと同時に、社会的に弱い立場とされる子どもたちの状況も世界で注目されるようになっていきます。こうした流れの中で「子どもの権利条約」は1989年11月20日の国連総会にて採択され、日本は1994年に批准しました。現在、子どもの権利条約に締約している国・地域は、日本も含めた196ヵ国。世界で最も広く受け入れられている人権条約になっています。
子どもの権利条約では、18歳未満のすべての子どもが一人の人間としてさまざまな権利を持っている(権利の主体である)と記されています。これまでの「子どもは弱くて大人から守られる存在」から「(それだけでなく)一人の人間としての権利を持っている」という考え方のもと、大人(国)は、この子どもの権利を守る「義務の担い手」として、法律や政策などを通じて子どもの権利の実現に努めることが明記されています。
「子ども基本法」との関係
「子ども基本法」とは、子どもを一人の人として尊重し、その権利を守るために存在する日本の法律です。2023年4月に施行された子ども基本法には、子どもを中心とした社会をつくるため、子どもの権利条約の「4つの原則」が反映されています。
そのため、子ども基本法でも子どもの権利について明記され、この原則をもとにさまざまな施策が行われています。
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「児童福祉法」との関係
子どもの権利条約は、児童福祉法の基本理念にも反映されています。2016年(平成28年)の法改正によって子どもが“権利の主体”として位置づけられ、子どもの権利は次のように明確化されています。
「全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのっとり(中略)その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られること、その他の福祉を等しく保証される権利を有する」
引用:デジタル庁 e-Gov法令検索|児童福祉法
これに基づき、子どもの権利を守るための義務を保護者だけでなく、国民全体、国と地方自治体にも課しています。
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「子どもの権利条約」4つの権利

子どもの権利条約は全部で54条ありますが、基本的に以下の4つの権利に分けられます。
生きる権利
「生きる権利」は、子どもが命を守られ健やかに成長する権利です。住む場所があり、食べること、医療を受けること、安全な環境で育つこと、心身や社会性を伸ばすことが含まれます。
育つ権利
「育つ権利」は、教育を受けること、スポーツや文化、遊びを楽しむことなどを通して自分らしく能力を伸ばしていく権利です。
守られる権利
「守られる権利」は、虐待、暴力、いじめ、差別、搾取、有害労働など、子どもにとって有害なことから守られる権利です。大人は子どもをこれらの危険から遠ざけ、安心して暮らせるようにする責任があります。
参加する権利
「参加する権利」は、自分に関わることについて意見を言い尊重される権利です。子どもの参加する場や方法は、子どもの年齢や状況によってさまざまな形があります。参加して実際の意思決定に何らかの影響を与えることによって、”意味のある参加”となることが子どもにとって大切で、こうした経験が自己肯定感や自己有用感の向上にもつながっていきます。
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「子どもの権利条約」4つの原則

子どもの権利条約の基本的な考え方は、4つの原則に示されています。これらの原則は子ども基本法に取り入れられています。
差別の禁止(差別のないこと)
すべての子どもは、子ども自身や親の人種、国籍、性、意見、障害、経済状況などいかなる理由でも差別されず、条約の定めるすべての権利が保障されます。
子どもの最善の利益(子どもにとって最もよいこと)
子どもに関することが決められ、行われるときは、「その子どもにとって最もよいことはなにか」を第一に、子どもと一緒に考えることとしています。大人が勝手に決めた最善の利益を押しつけないことが求められています。
生命・生存及び発達に関する権利(命を守られ成長できること)
すべての子どもの命が守られ、もって生まれた能力を十分に伸ばしてその子のペースで成長できるよう、医療、教育、生活への支援などを受けることが保障されます。
子どもの意見の尊重(意見を表明し参加できること)
子どもは自分に関係のあるあらゆる事柄について自由に意見を表すことができ、大人はその意見を子どもの発達に応じて十分に考慮し、一緒に考え行動していきます。子どもの権利を適切に実現するためには、子どもの意見を聴くことがとても重要です。
日本における子どもの権利の現状と課題

さまざまな条約や法において子どもの権利が明確化されている一方で、課題が多いのも事実です。ここでは、日本における子どもの権利の課題について見ていきます。
権利が十分に知られていない
子どもが自身の権利について家庭や学校などで学ぶ機会は少なく、周りの大人たちも「子どもの権利」について十分に把握していないケースが少なくありません。そうした理由から大人がまだまだ子どもを「保護の対象」としてしか見ておらず、子ども自身が尊重されていない状況が生まれやすいという現実があります。
そのため、まずは「子どもの権利」について十分に浸透させていく必要があります。
意見表明・参加の機会が少ない
「権利が十分に知られていない」現状に伴い、子どもが自由に意見を表明したり、参加したりする機会が少ないことも課題として挙げられます。
たとえば、地域や政策決定などにおいて「子どもにはまだ早い」「聞いてもわからないだろう」と判断され、そうした場に子どもは排除されてしまいがちです。仮に意思決定の場に参加をしていたとしても、「年功序列」「上下関係」といった社会構造から形だけになってしまい、子どもの声は反映されにくいのが現状です。
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虐待やいじめ問題
日本では、子どもの虐待が増加し続け、学校、さらにはインターネットの普及によりいじめ問題も後を絶ちません。そうした場合、子どもの「守られる権利」が十分に保証されていないことになります。
権利を回復してしっかり守られてていくためには、子どもが相談できる環境と「自分は大切にされている」という安心感が必要です。
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貧困や格差問題
日本では相対的貧困率が高く、家庭での経済状況によっては食事や教育が満足に与えられず、医療へのアクセスなどにも差が出てしまいます。
本来大切にされるべき「生きる権利」や「育つ権利」が家庭環境によって左右されてしまっているのも、現在の日本が抱える深刻な社会課題のひとつになっています。
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法律・制度と現実のギャップ
上記の課題から実際の現場では、子どもの権利に関する法や条約が十分に活かされていないのが今の日本の現状です。
また、困った際の子どもの相談窓口があっても子ども自身が把握していなかったり、「親や学校に知られてしまうかも」といった理由が障壁になり、結果的に窓口や制度自体が「あるだけ」になってしまっている場合も少なくありません。
こうしたギャップを埋めていくために、国や各都道府県だけでなく私たち大人一人ひとりが意識を変えて、できることから行動に移していくことが求められます。
子どもの権利を守るための取り組み

最後に、ここまで解説してきた子どもの権利に関するさまざまな課題に対し、国はどのような取り組みを行っていっているのか、そして私たちにできることについてご紹介します。
子ども家庭庁の取り組み
こども家庭庁は、子どもの権利に関する条約の趣旨や内容、子どもが権利の主体であることについて、社会全体での共有に向けこどもの権利の普及啓発に取り組んでいます。
また、子どもの権利の正しい理解と普及を通じた子どもたちのウェルビーイングの向上を目指し、2024年に日本ユニセフ協会と共催で「こどものけんりプロジェクト」を開始しました。
「こどものけんりプロジェクト」では、子どもの権利条約に加え、家や学校、地域やスポーツ界といった各現場においての子どもの権利について解説し普及しています。
また、特設サイトでは自身の持つ権利について理解できるよう、子どもに向けてわかりやすくしているのが特徴です。
子どもアドボカシー

子どもに意見表明や参加の権利があっても、十分に発揮できなかったり、場合によっては遮られてしまったりすることがあります。「子どもアドボカシー」は、そんな大人や社会に対して声を挙げにくい子どもが、自身の気持ちや意見をきちんと、そして安心して表明し尊重されるよう支援します。
近年では、児童養護施設や学校、病院や福祉現場などさまざまな場所で子どもアドボカシーが実施されています。
現場では、大人の都合や視点ではなく、常に子どもの目線に立って考えて傍で支え、時には代弁するなど、大事な役割を果たしているのです。
【関連記事】声を挙げる権利“アドボカシー”とは?子どもが自分の未来を選べる社会を実現するために
私たちができること
大人一人ひとりも、常に子どもの権利を守る側に立っており、専門的なことではなくとも子どもに対してできることがあります。
たとえば、子どもの安全を最優先する、子どもに大切な存在であることを伝える、話しを最後まで聞く、たとえ意見が間違っていても真っ向から否定しない、地域の子どもに対しては挨拶をする、会話をする、困っていたら手を差し伸べる、困ったら頼ってよいと伝える、子どもに関わるボランティアに参加する等々、子どもの権利を尊重する行動をとることで、子どもたちの権利を守り、人権を尊重することにつながるのです。
まとめ
子どもの権利を守るのは、国や専門家だけの役割ではありません。私たち一人ひとりによる「子どもの気持ちを尊重する」「話を最後まで聞く」といった小さな積み重ねが、子どもの権利を守り、安心や安全、そして未来への希望につながります。子どもたちにとって生きやすい社会を目指し、”子どもと一緒に”生きていくことを意識して、まずは権利について”知る”一歩から初めてみませんか?
【参照】
日本ユニセフ協会|子どもの権利条約
こども家庭庁|こどもの権利の普及啓発
こども基本法プロジェクト|子どもの権利条約
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